日本版PICシンボル講習会 (2016年3月5日(土))

2016年3月5日、同志社大学で、シンボルの認知とPICシンボルを使った実践的指導についての講習会を開催しました。認知心理学の観点から、シンボルの認知にも関わる認知バイアスについて北神先生からお話していただきました。実践編として、利用者の発達を考慮したシンボルの指導方法と、知的障害者が余暇を充実して過ごせるためのシンボルの利用方法を報告しました。また、PIC研究会が約150個制作した新作シンボルについて、語彙やデザインの特徴を紹介しました。



色眼鏡は避けられない?:知覚,記憶,思考,メタ認知におけるさまざまな認知バイアス(認知の偏り)

北神慎司 (名古屋大学)


「人を色眼鏡で見てはいけない」とは言うものの、ついつい、見た目に左右されてしまうこともあるかと思います。この「思い込み」のようなものは、心理学では認知バイアス(認知の偏り)」と呼ばれるのですが、視覚シンボルの認知においても、これは例外ではありません。本講演では、具体的な研究知見を紹介しながら、認知バイアスについて考えました。



新規作成PICの報告

小林美津江(大阪府障害者福祉事業団 大阪府立金剛コロニー)


新作PICを158個作製したことを報告した。完成までには、アイディアを出し合い、イラストを作製し検討の上作製している。また、JIS作図原則に則り、具体的で単純、リアリティがある描き方等に配慮し、不足していた語彙の補充を中心に作製した。この新作PICは平成28年4月開所予定の大阪府障害者福祉事業団の新規施設に採用された。 また、経済産業省が中心となり働きかけ、PICシンボルが国際標準規格(ISO)となったが、このことは今日までのPIC研究会の活動が、公益に資することができたと考えていることを報告した。



発達を考慮したやりとりを豊かにするシンボルの指導

藤澤和子(大和大学)


シンボルでやりとりするためには、わたしがあなたに、何かを伝える三項関係や伝えたい気持ち、シンボルの意味が理解できる象徴機能の発達が必要である。このような発達を促しながらシンボルを導入し、やりとりを育てるためには、楽しかった経験をした直後やそれを共有した時にコミュニケーションをもつ、伝えたいことが表現できるコミュニケーションボードやブックを作る、音声・サイン・文字等、利用者の使える手段を併用する、 応答を引きだす受け答えをする等に留意する。




大まかな時間の流れを理解し余暇の充実を図る取り組み

佐藤祥弘(大阪府障害者福祉事業団 大阪府立金剛コロニー)


日課が待てない知的障がいがある利用者への、PICシンボルを使った大まかな時間の流れと余暇時間の理解を助ける取り組みについて報告した。




シンボル制作についてのPIC研からの提案

永野建一(元 京都市立東総合支援学校)


PICシンボルの長所を中心に紹介した。生活年齢に応じたシンボルを使うことが、利用者のプライドや人格を大切にすることにつながる。PICシンボルは、子どもから高齢者まで年齢を超えて受け入れらやすいデザインで生涯を通して使用できる。また、黒の背景に白で描かれており、デザインもシンプルである。そのために、視覚障害のある人にも認知されやすく、離れていても分かりやすい。また、色覚障害があっても見え方に影響を受けることはない。2015年度は、より分かりやすいシンボルにすること、今までになかったシンボルを増やすことを目的に約150個のシンボルを制作した。