日本版PICシンボル講習会 同志社大学 (2014年11月2日(土))

2014年11月2日、同志社大学で、PICシンボルの原著者であるサバス・マハラジ氏を招き、PIC講習会を開催しました。マハラジ氏の来日講演は5回目となります。1980年にPICシンボルをカナダで開発され、世界的な普及に努められてきました。現在は、レジャイナ大学の研究員として、シンボルセミナーを開催し、PICシンボルでコミュニケーションを支援するための実践と研究をされています。その最新情報をお話しいただきました。
また、福祉、建築、心理学、教育の分野から、新しい知見をお届けしました。わかりやすい施設表示、PICキューブを使ったことばの教材、高齢者等の認知特性に合うピクトグラムの研究について、提案しました。



「コミュニケーションギャップを埋めるPICシンボル」

サバス マハラジ(ピクトコム インターナショナル代表)
通訳:井上智義(同志社大学)


PICシンボルは、明確なはっきりとしたグラフィックシンボルである。そして、黒の背景に白で意味を表すものが描かれる。これらの特徴により、視覚的にインパクトがあり、 明確に意味が伝わり、子どもじみたものではなく一生を通して使用できるコミュニケーション手段である。運動障害、認知障害、自閉症、ダウン症、視覚障害、聴覚障害、失語症、アルツハイマー症等の人が使用している。
世界で活用されている具体例には、次のようなものがある。カナダ、スウェーデン、日本で開発されているソフトウェア、スウェーデンや日本で出版されている書籍、コミュニケーション用のボード、ことばの学習の教材、病院の急患で使用するためのボード、旅行のスケジュール。街で使われている例として、スーパーの店内案内、スウェーデンのバスの停留所のマーク、成人用の日課表、ポスター、災害時用のコミュニケーションボード等がある。PICシンボルは世界的に共有できるものであり、未来にむけてさらに普及することを願っている。



「知的障害者施設におけるPIC表示について」

中島 究 (建築士)
小林美津江(大阪府立金剛コロニー)



事業団が2007年に医療型福祉施設を建設、翌年に特別養護老人ホームを建設した際の、わかりやすい施設表示を実施した内容を振り返り報告した。


2007年当時と現在の施設表示への意識を比較すると、情報保障に関する法整備が進んだ背景があり、障害者権利条約批准を契機に、情報保障の必要性があることを報告した。また、表示方法について、総合案内、エリアの色分け、PIC選定や作成、PICの色・大きさ・高さ、足元表示等についての検討内容を紹介し、今後の新施設の表示に活かすことを報告した。




「様々な利用者の認知特性とピクトグラム」

猪股健太郎 (関西大学大学院)


認知特性には個人差が存在し,認知心理学ではその差違や特徴について様々な観点から検討されてきている。ピクトグラムを運用する際,これらの認知の個人差について理解することで,より多くの利用者に共通する有効な活用法や,個々の利用者の特性に適用する際の注意点を見出すことは重要である。そこで今回は,ピクトグラムの認知に関する個人差についての研究知見を紹介する。またこれらを踏まえて,よりユニバーサルデザインに近づける工夫についての具体的な提案も行う。




「PICシンボルを使用した教材の提案」

岡田さゆり(滋賀県立野洲養護学校)
永野 建一(放課後等デイサービス さくらハウス指導者)


一辺が3㎝の立方体の面に、PICシンボルや写真をはりつけたキューブの教材を、使い方の動画とともに紹介した。コミュニケーションスキルの学習のために、カテゴ リー別に外枠の色をそろえたものを、概念学習のためには、動物や食べ物など、一つの事物を多角的に描いた写真やシンボルをはったものと概念でまとめる箱を作った。マハラジ氏のコメントにあったように、手で操作することであきずに、集中して楽しめる教材である。